1.熱解析とは?
熱解析は、CAE解析のメニューの1つです。様々な温度条件において、製品や部品、構造物が示す変化を計算によって予測・分析するものです。熱解析の利点として、以下が挙げられます。
– オーバーヒートの予測:
設計物がオーバーヒートする危険性を評価したり、熱が集中する可能性のある箇所(ホットスポット)を特定することが可能です。こうした解析が、善後策を講じてリスクを低減したり、設計物の完成度を確保することに繋がります。
– 温度の予測:
実際の温度測定が不可能な場合でも、構造物の温度分布を予測することが出来ます。
– 環境の再現:
試験のために実際に構築することが困難な、複雑な温度環境であっても、仮想的に再現・構築することが可能です。
2.熱解析の進め方
ヒートシンク※1の熱解析を例に、解析手法を見ていきましょう。下記画像では、ヒートシンクに電子部品(レギュレータ)が接しています。
※1 放熱や排熱のために使用される部品。
まず、CADで作成した設計データ(CADモデル)をCAE解析ソフトウェアに取り込みます。
次に、解析対象の構造物を「小さな要素」に分割してモデルを作成します。
「小さな要素」とは、この小さな一つ一つのマスのことです。
解析対象の構造物をこのように「小さな要素」に分割したものをメッシュと呼びます。
メッシュを作成したら、下記の項目を設定します。
(1) 熱特性・・・熱伝導率、熱伝達率 など (材料ごとに異なる、熱の伝わり易さ)※2
(2) 熱荷重・・・構造物の温度、環境温度、熱量[W(=J/s)]
※2 「熱伝導率」はある物体の内部における熱の伝わり易さを、「熱伝達率(熱伝達係数)」は固体の表面と流体の間における熱の伝わり易さを数値で示すもの。
次に、どの熱移動(伝熱)を分析するか定義します:
(1) 熱伝導・・・・・・固体内部の熱移動
(2) 熱伝達・・・・・・固体-流体境界の熱移動
(3) 熱放射(輻射)・・・電磁波※3形式での熱移動
※3 電磁波:電気の力が働く空間(電界)と磁気の力が働く空間(磁界)が組み合わされたもの。電界と磁界が交互に発生しながら波のように空間を伝わっていく。電磁波のエネルギーは、物体に吸収されることで熱になり、また熱を持つ物体からは電磁波が放射されている。
(1) 熱伝導 – 固体内部の熱移動
熱が固体(構造物)の内部で高温側から低温側へと伝わる「熱伝導」を解析します。熱変形や変形量を数値化し、変位の絶対値で表示します。また、3Dデータ・マッピングを利用して熱応力の大きさと位置、さらに熱分布を視覚的に捉えることが出来ます。
(2) 熱伝達 – 固体-流体境界の熱移動
流体(液体・気体)と、それに接する固体(構造物)の表面との間で熱が移動する「熱伝達」を解析します。熱伝達を熱伝達係数(熱伝達率)として数値化し、3Dデータ・マッピングを利用して固体-流体間の熱移動を視覚的に検証可能です。
(3) 熱放射(輻射) – 電磁波形式での熱移動
電磁波として放出された熱が空間を移動する「熱放射(輻射)」を解析します。熱放射量を数値化し、3Dデータ・マッピングを利用して、電磁波としての熱移動を視覚的に確認することが出来ます。
3.熱解析を活かした設計
熱解析によって、測定の難しい部位の温度を把握したり、試験段階では再現することが困難・不可能な環境を仮想的に構築することが可能です。また、シミュレーションによって熱の流れ(熱移動)も可視化されます。これにより、オーバーヒートを軽減するのに必要な空気の流量や設計要件が明確に示され、構造物が使用温度内にあることを保証することが出来ます。オーバーヒートする可能性を検証することも出来ますから、構造物が使用範囲内の温度にあるかどうか確認可能です。
温度の変化だけではなく、熱の移動による構造物の体積の変化、熱応力の変化も調べることが出来ます。こうした利点に加え、コンピュータ上でシミュレーションを行うことで試作品の製作やテスト回数を減らすことも出来るため、時間もコストも節約できます。ひいては設計プロセス全体の最適化にも繋がりますので、ぜひCAE解析を試して頂きたいと思います。
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