1.疲労解析とは?
疲労解析は、CAE解析のメニューの1つです。疲労解析を実施することで、設計段階の構造物の耐久性が十分かどうか検証することが出来ます。
また、この解析を行うことで、疲労破壊※1も考慮した「安全上のマージン(余裕、ゆとり)」を設けることも可能になります。
※1疲労破壊:一度の作用では構造物を破壊できないレベルであっても、その荷重を繰り返し受けた構造物が破壊される現象(もしくは、同様のレベル内で変動する荷重を受けた構造物が破壊される現象)
2.疲労解析の進め方
まず、CADで作成した設計データ(CADモデル)をCAE解析ソフトウェアに取り込みます。
次に、設計した構造物に使用されている材料の特性、ヤング率(変形のしにくさ)や拘束条件(構造物の固定方法)などの境界条件を設定します。
※2 S-N曲線(S-N線図):Sは 応力(stress)から「繰り返す負荷の大きさ」を指す。Nは「破断までの繰り返し数」(number of cycles to failure)。「繰り返す負荷の大きさ」が「破断までの繰り返し数」に反比例することが示されるグラフ。
そして、構造物のモデルを作成します。
実用の際に想定される荷重をこのモデルにかけ、疲労寿命※3を数値化します。
※3 疲労寿命:材料や構造物に破壊が起こるまでの荷重の繰り返し数
構造物の想定寿命、または「構造物が故障するまでの使用サイクル数」をモデル上にコンター(等高線)で図示します。等高線の密度が高ければ高いほど、その部位にはより高く応力が集中していることを意味しており、疲労破壊がより早く起こる可能性があります。
なお、疲労解析では極限強度※4の代わりに「疲労限度※5」を用いて解析を行います。
※4 極限強度:材料、構造物などが破壊を起こす(断面積あたりの)最大荷重
※5 疲労限度:S-N曲線で示される、繰り返し負荷または応力の上限値。この負荷を無限にかけても構造物は破断しない
理由① 極限強度未満の荷重でも、疲労破壊は起こるから。
理由② 極限強度は、静破壊(増加する荷重による破壊)の解析に用いられるから。
疲労寿命に加えて、荷重をかけられた構造物に発生する最大の変形量もまた同様に、視覚的に把握することが可能です。
3.疲労解析を活かした設計
疲労解析を行うことで、設計した構造物に十分な耐久性があるかどうか検証し、また安全マージンを持たせることが可能となります。設備などの故障原因の8割を部品の疲労破壊が占めるという統計※6もあり、部品の設計・開発に疲労解析を採用することの重要性は極めて高いと言えます。
※6 『技術大全シリーズ 金属材料の疲労破壊大全』(日刊工業新聞社) 2023年
構造物に繰り返し荷重(あるいは実働荷重)をかけるという物理的な評価試験を仮想的に再現できるのは、コンピュータ上のシミュレーションならではの利点です。試作品の製作・テスト回数を減らすことも出来るため、時間もコストも節約できます。ひいては設計プロセス全体の効率化にも繋がりますので、ぜひCAE解析を試して頂きたいと思います。
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