国際的な安全確保の考え方とは?~危険検出型システムから安全確認型システムへ~
ISO12100が規格化されたことで、機械や装置類には安全機構の取り入れを必要とします。
ISOでいう安全とは「受け入れ不可能なリスクがないこと」と定義されています。
そのため「機械安全」に対する考え方が、従来日本で考えられてきた 「危険検出型システム」 から「安全確認型システム」に変わりつつあります。
作業現場における安全対策は、従来の防護具と作業者への教育や訓練に依存する受け身の安全から、ヒューマンエラーは必ず起こるものと仮定し、ヒューマンエラーが事故につながらないよう機械に安全設計を施し、万一の場合にも事故を起こさない製品作りを目指す考え方へと大きく移り変わっています。
従来の日本の考え方(指差し呼称)
- 「災害は努力すれば2度と起こらないようにできる」
災害の主要因は人であり、技術対策よりも人の対策。 - 「管理体制を作り、人の教育をし、規制を強化すれば安全を確保できる」
- 「 安全は基本的にタダである。(安全コストを認めにくい)」
目に見える「具体的危険」に対して最低限のコストで対応する。 - 「度数率(事故発生件数)重視」
- 「見つけた危険を無くす技術」(危険検出型システム)
危険の情報をエネルギーに運んでもらい、その否定で安全を示すシステム。
つまり「危険が検出された時にだけ、機械の運転を許可しない、あるいは停止させる」 システム。
危険を検出してエネルギーを発生して初めて災害を回避しようとするシステムが該当します。
この場合、エネルギーを発生できないときには 災害を回避することができません。
本質的安全設計
- 「災害は努力しても、技術レベルに合わせて必ず起こる」
災害を防ぐのは技術の問題であり、人の対策よりも技術対策。 - 「人は必ず間違いを犯す。技術向上がなければ安全を確保できない」
- 「 安全は基本的にコストがかかる。」
危険源を洗い出し、リスク評価をし、評価に応じたコストをかける - 「強度率(重大災害)重視」
- 「論理的に安全を立証する技術」(安全確認型システム)
あらかじめ準備されたエネルギーを「安全が確認される時のみ出力する」システム。
安全を確認できない時には、エネルギーの発生をやめて災害を回避するシステムが該当します。
つまり故障時にはきちんと安全を確保することができます。
「運転指令」と「安全確認」の二つの信号がきて初めて「運転実行」となるシステムのため、安全が確認されない限り機械が動く事はありません。
安全確認型と危険検出型の違い
項目 | 安全確認型システム | 危険検出型システム |
---|---|---|
システムの構成 | 安全性の立証が可能である | 安全性の立証はユーザーでは不可(信頼性に基づく) |
システム構築上の柔軟性 | 安全が確保されるので現場で自由な改善ができる | 必ずしも自由な改善活動ができない |
装置機能の柔軟性 | フェイルセーフ構造が実現可能である (故障時は運転停止となる) | 安全機能故障時には必ずしも運転停止とならないため安全確保されない |
装置の劣化 | 定期的な検査をすることなく安全が確保できる | 自動火災報知設備の感知器のように定期検査で機能確認を必要とする |
安全の確保と生産性の向上 | 安全機能の多重化で生産性の向上が達成可能である | 多重化しても生産性向上につながらない |
人為的いたずらによる機能停止 | 難しい(いたずらできないかまたはできにくい構造) | 容易にできる |
用語説明
フェイルセーフ |
国際電気標準では、「特定の障害モードが圧倒的に安全側であるようなアイテムの設計特性」(IEC61508第4部)と定義しています。 つまり、「安全側(例、機械が止まる側)に故障する」ことを言います。 |
- ISO「機械安全」国際規格 (社)日本機械工業連合会編 日刊工業新聞社
- 機械設計 日刊工業新聞社
- 機械安全の国際規格とCEマーキング 丸山弘志 日本規格協会
- 21世紀の安全技術 日経メカニカル著 日経BP社